西加奈子『くもをさがす』河出書房新社
★★★★☆
【内容】
カナダ在住の作者が乳がんになり、そこでの生活、治療を描いたエッセイ。日本の医療制度との違いや医療従事者たちの患者への接し方の違いを時に笑えるエピソードを交えて描かれている。
【感想】
海外に住んでいて一番困ることは病気やけがの際に医療機関にかかることだ。まず言語が通じない。私は日常生活に困るほど英語ができないので当然だが、日常生活に困らないレベルや仕事で英語を使っている人ですら、医療機関は日本語で受診したいという。そして次に制度が全然違う。日本では受診したいと連絡したり、直接出向けば受診できないということはほぼない。だが、アメリカでは違う。予約を取らなければ受診できないし、予約する際にはまず保険がきくか確認してからでないと取れない。初診を取るのが困難な医療機関もたくさんある。
医療従事者たちの作者への対応も、「わかるー!」と思わせるものばかりだった。
治療中の気持ちや、がんが治っても、心に常に付きまとう暗い不安が描かれているが、全体として暗く重い内容になりすぎていないところがよかった。
コメント