川上未映子『黄色い家』中央公論新社
★★★★☆
【内容】
生活に行き詰まりどうしようもなくなった若い女の子3人と思慮の浅い黄美子さんとの物語。母一人娘一人で目標もなく、その日暮らしをしていた花の前に突然現れた黄美子さん。ご飯を用意してくれたり、掃除したり、布団をきちんと畳むといった一見キチンとした行動や、自分を思ってくれていると感じる瞬間があることに、花は惹かれた。自分が苦労して貯めたお金を母親の元恋人に盗まれ、どうしようもなくなった気持ちになった花は、突然再会した黄美子さんについて家を出た。家を出てからはスナックで働き楽しく暮らしていたが、そのスナックが燃えてしまったことでまた生活が行き詰った。そこから怪しい仕事に手を出し、どんどん追い詰められていく。
【感想】
似たような話で若い女子とそれを監視する大人が出てくるドラマか映画を見た気がするが、それを思い出させた。誰も悪くないけど、思慮が浅く、結局同じような未来を迎えてしまうのか、と希望がない。暗すぎるわけではないけど、どうしようもなくなる気持ちになる。花自体は真面目でピュアだったのだから、誰かきちんとした人が一人でも花のそばにいて導いてくれれば、明るい未来があるのに、と思う。たまたま一冊前に読んだ『水車小屋のネネ』と境遇はほぼ同じなのに、『水車小屋のネネ』の方は周りの大人に恵まれてきちんとした自分の生活を手に入れることができ、『黄色い家』は、これから立ち直ることができるのか不明なまま終わった。
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