六人の嘘つきな大学生

浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』角川書店 ★★★★★

2部構成になっている。一部目は主に波多野祥吾の目線から就職活動真っ只中の時代。ところどころその後の学生たちへのインタビューも挿入されている。2部目は主に嶌衣織の目線から最後のグループディスカッションで起きた事件を解き明かす中で、6人それぞれの表側と裏側が明かされていく。

大人気企業の最終面接がグループディスカッションとなったが、そこで事件が起きた。グループの話し合いで内定者を一人決めるというのがディスカッションのテーマとされたが、その密室空間に学生6人の裏の顔が暴露された封筒が何者かにより置かれた。

就職活動というどのように努力をすればいいのかわからない時間。今まで数値化された学力や、努力で報われることが難しい。たった1枚の紙、たった数分対面しただけで必要か必要でないか判断される。今までの学生生活が終わり、新たなステージに踏み出さなければいけないのに、そのやり方がわからない。精神的に不安定になり、何が正しいのかわからなくなる。そんな特殊な時期であると思う。

『完全にいい人も、完全に悪い人もこの世にはいない。犬を拾ったからいい人。信号無視をしたから悪い人。募金箱にお金を入れたからいい人。ごみを道端にポイ捨てしたから悪い人。・・・』この部分がとても心に響いた。すべての人にいい面と悪い面があり、両面で一人の人になる。

最後、すべてがきれいにまとまりすぎていたかな、と感じた。就職活動という混乱、混沌のなかでもう少し余白を残してもよかったのかな。でもそのおかげで読了はとてもさわやかだった。

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