八月の御所グラウンド

万城目学『八月の御所グラウンド』文藝春秋 ★★★★☆

女子駅伝に出場する女子高生坂東の物語『十二月の都大路上下ル』と八月の早朝に京都の御所グラウンドで野球をすることになった『八月の御所グラウンド』の二つの物語が入っている。

『十二月の都大路上下ル』は、補欠だった1年生が急遽先輩の代わりに駅伝のアンカーを務めることになる。本番中に、本物の新選組と思われる集団が沿道を走っていることに気が付くが、沿道の人は誰一人気が付いていないという不思議な経験をする。短編でサクッと読める。

『八月の御所グラウンド』は大学の単位と引き換えに教授から指示された野球の『たまひで杯』に急遽駆り出された朽木が沢村栄治や戦争で死んでいったと思われる人と野球をすることになる物語。野球がしたくても戦争でできなかった若者たちがお盆に京都に現れて一緒にすることになる。大学に入っても、戦争に召集され、そのまま亡くなった若者もたくさんいて、彼らは野球がしたくてもできずに死んでいった。沢村栄治の名前は知っていたが、三度も戦争に召集され、そのために肩を壊して投球フォームが変わったり、最後は戦争で亡くなったことは知らなかった。不思議だけどとても面白い話だった。短くてすぐ読める。

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